Canton：ウォール街で実際に使われているWeb3金融インフラストラクチャ

6兆ドルのオンチェーン資産、1日平均2,800億ドルの米国債レポ、Cantonの機関向けストーリーはもう隠せない？

執筆：KarenZ，Foresight News

ブロックチェーン技術がウォール街と出会うとき、核心的な課題は技術そのものではなく、プライバシー保護、システムの相互運用性、規制遵守という一見矛盾する三大要件のバランスをどう取るかにあります。

Canton Networkはそのために誕生しました。これは一般的なパブリックチェーンでも、従来型のプライベートチェーンでもなく、伝統金融とDeFiの協調運用を本当に実現するAllFiブロックチェーンです。

開発元 Digital Asset：大手プレイヤーの後ろ盾

筆者は7月初旬に「4兆ドルRWA帝国の背後にいる隠れた推進者：Digital AssetとCantonの金融インフラ野望」で、Canton開発元Digital Assetの発展経緯、チーム背景、資金調達状況について詳しく紹介しました。

参考：Digital Asset公式サイト

資金調達、チーム背景、初期パイロットのいずれにおいても、Digital Assetと取引大手DRWは密接な関係を持っています。

資金調達面では、Digital Assetは6月に1億3,500万ドルの戦略ラウンドを完了し、DRWの投資会社DRW Venture CapitalとTradeweb Marketsがリードし、BNP Paribas、Circle Ventures、Citadel Securities、DTCC、Virtu Financial、Paxosなどが参加しました。

チーム面では、共同創業者兼CEOのYuval RoozはDigital Asset設立前にDRWで電子アルゴリズム取引部門を管理し、その後DRW Investment Groupに参加、さらにCitadelのトレーダー兼開発者も務めました。共同創業者のDon Wilsonは1992年に多角的取引会社DRWを設立し、同社を成長させました。もう一人の共同創業者兼ネットワーク戦略責任者Eric Saranieckiは、Digital Asset参加前にDRW Tradingで非流動性コモディティ市場に特化した取引プラットフォームを構築し、Cumberland Miningも共同設立しました。

初期パイロットには、DRWのほか、Goldman Sachs、HSBCなど多数の資産運用会社、銀行、カストディアン、取引所、金融市場インフラが参加しています。

注目すべきは、今月初めにCanton Coin財庫会社が設立され、Cantonトークンの機関実用性と資本市場での応用可能性がさらに高まりました。11月3日、Tharimmuneは約5億4,000万ドルのプライベートプレースメントを完了し、DRWとLiberty City Venturesがリード、Canton Coin財庫戦略の構築に充てられます。その他の参加者にはARK Invest（Cathie Wood率いる）、Bitwave、Broadridge、Clear Street、Copper、Digital Assetなど多数の機関が含まれます。

Tharimmuneはスーパー検証ノードとして運用するほか、Cantonネットワーク上で他の検証ノードも運用し、Cantonネットワーク上のアプリケーション開発にも投資する計画です。

強調すべきは、Digital Assetは6月に1億3,500万ドルのEラウンドを完了した後、7月にはYZi Labsからも投資を受けました。さらに、YZi Labsは10月にCantonエコシステムに進出し、Canton Network上のネイティブ取引プラットフォーム開発元Temple Digital Groupにも投資しました。

Canton：ウォール街のリアルな選択肢

Cantonのエコシステムはすでにその価値を証明しています。2025年にはCantonの採用量が大幅に増加し、現在Cantonには31のスーパー検証者、595のアクティブ検証者がいます。Cantonが10月末に公開したデータによると、毎月Canton Coinを使った取引は1,500万件を超えています。Canton上のアプリケーションはすでに6兆ドル以上のオンチェーン資産を処理し、米国債レポ取引は1日あたり2,800億ドルを超えています。

これらの数字は概念実証ではなく、実際の金融活動です。Cantonはすでにウォール街でリアルな取引が行われる場所となっています。債券、レポ契約、マネーマーケットファンド、ローンコミットメント、保険、モーゲージ、プライベートエクイティなど現実世界の金融資産において、BNP Paribas、Deutsche Börse Group、EquiLend、Goldman Sachsなどの企業がCantonを採用しています。

Canton Networkのエコシステムは、比較的完全な金融インフラ体系をすでに形成しており、公式エコページには185のパートナーが掲載され、金融とWeb3のフルスタックをカバーしています。

• トークン化資産：債券、レポ契約、マネーマーケットファンド、ローンコミットメント、保険、モーゲージ、プライベートエクイティなど現実世界の金融資産から、機関用途を目指すラップド暗号資産（例：CBTC）まで、Cantonは数兆ドル規模のトークン化現実資産（RWA）をカストディしています。Goldman Sachsのデジタル資産プラットフォーム（GS DAP）、HSBCのOrionプラットフォーム、HKEXのDLT決済加速プラットフォームSynapseはすべてCanton上で稼働しています。
• ステーブルコイン：CircleのUSYC（Hashnote買収で取得）、USDC、ステーブルコインプロジェクトBraleやM1などのプロバイダーがCanton上でステーブルコインを発行するか、準備しています。
• 決済：Canton Networkエコシステムの決済プロジェクトやアプリには、Circle、B2Bクロスボーダー決済ネットワークBitwave、決済プラットフォームPaysafe、決済技術プロバイダーWorldpayなどがあります。
• 流動性と取引：QCP、DRW、GSR、FalconXなどのマーケットメイカーがCanton上で活発に活動し、トークン化資産に深い流動性を提供しています。
• 相互運用性：現在、CantonエコシステムはChainlink、LayerZero、Wormholeなどの相互運用性ソリューションによるクロスチェーン相互運用サービスを導入しています。
• カストディとウォレット：CopperやZodiaのような機関向けカストディアンから、Five NorthのLoopウォレット、そしてまもなくCantonをサポート予定のLedgerハードウェアウォレットまで、Cantonは資産保管・カストディ層で高額資産家、大企業、個人投資家まで全ユーザータイプをカバーする準備ができています。
• コンプライアンス：CantonエコシステムはEllipticによる規制機関が信頼するオンチェーンAML監視ソリューションを統合し、TRM Labsによる暗号資産関連の詐欺や金融犯罪の検出・調査も統合しています。
• データと分析：The Tie、Coin Metrics、Kaiko、RWA.xyzなどのデータプロバイダーもCantonネットワークの活動インサイトを提供、または提供予定です。

機関採用の4大ドライバー

プライバシー・相互運用性・コンプライアンスの両立

プライバシー保護——機関レベルのデータガーディアン

金融機関にとってプライバシーは選択肢ではなく必須事項です。Canton Networkは選択的開示メカニズムにより、取引はプライベートで、関係者のみが自分に関係する取引部分を閲覧できる一方、ネットワークの完全性は公開検証可能というエレガントなバランスを実現しています。

これにより、銀行はCanton上で大口取引を行っても、ネットワーク全体に機密財務情報をブロードキャストする必要がありません。これはOTC取引、デリバティブ取引、企業ファイナンスにとって極めて重要です。

相互運用性——断片化した金融をつなぐ

世界の金融システムは長らく分断状態にありましたが、CantonはGlobal Synchronizer（主権ブロックチェーン間のアトミック取引を実現）とCIP-56（後述）標準化トークンプロトコルにより、異なる決済システム、カストディアン、取引プラットフォームをつなぐ橋を構築し、資産の直接所有権のクロスシステムでの確認と実行を実現しています。

Cantonはまた、カスタムサブネットの作成もサポートしており、開発者はプライベートサブネット上でアプリを立ち上げつつ、Cantonのパブリック分散型インフラを利用してクロスチェーン取引が可能です。

規制遵守——コンプライアンスをコード化

Cantonは最初から規制世界のために設計されており、データ保存や剪定によりEUのGDPRなどの規制に準拠しつつ、暗号コミットメントにより過去データの改ざん不可性を確保し、重要な監査証拠を保持します。

また、CantonエコシステムにはEllipticやTRM Labsなどの大手コンプライアンス・フォレンジックプロバイダーが含まれており、ネットワークに直接統合されてオンチェーンAML監視や取引監視を提供できます。

CIP-56：統一資産管理標準

Cantonネットワークのトークンインターフェース標準として、ERC-20標準の大部分の機能（残高照会、トークン転送、取引履歴照会など）をカバーしつつ、規制対象機関や資産のニーズに合わせてアップグレードされています：

• プライバシー保護機能を追加し、資産保有や移転情報は必要時のみ共有。
• トークン管理者は資産の移転先を制御でき、トークン受領者はどこから資産を受け取るかをコントロールできます。
• アトミックデリバリー＆ペイメント決済（Delivery-vs-Payment (DvP)）をネイティブサポート。

Burn-Mint経済モデル

従来のパブリックチェーンのトークノミクスには長年の課題がありました——経済的報酬が主にインフラ運営者や初期投資家に集中し、ネットワークの実用性を本当に推進する開発者やユーザーへのトークン配分はごくわずかです。

Cantonはこのシナリオを書き換えることを目指しています。トークンはフェアローンチで、事前マイニングやVC割当なし、すべてのCanton Coinは実際の貢献によって獲得され、事前配布はありません。トークンはネットワーク実用性への真の貢献度に応じて継続的に配分されます：35%がインフラプロバイダー（スーパー検証者）、50%がアプリ開発者、15%がアプリで取引・インタラクションするユーザー（検証者）に分配されます。

トークンメカニズム面では、Cantonは「バーン-ミント均衡」メカニズムを採用し、トークン供給を動的に調整することでネットワーク活動、参加度、長期的価値創造を一致させることを目指しています。

• バーンメカニズム：ユーザーがCantonネットワークのアプリやインフラを利用する際、米ドル建てでCanton Coinによる手数料を支払いますが、これらの手数料はサービスプロバイダーに直接支払われるのではなく、バーンされて流通から退出し、供給が減少します。
• ミントメカニズム：サービスプロバイダーはアプリやインフラを運営した後、メカニズムにより新たなCanton Coinをミントして報酬を得ることができ、ユーザーからプロバイダーへの間接的な支払いを実現します。
• 均衡運用：全体の仕組みはクローズドループです。手数料バーンで供給が減り、参加増加でミントが発動し供給を補充。この設計によりトークン供給が需要変化に応じて反応し、ネットワークの持続的成長を支えます。

トークン供給とリリース面では、Cantonはホワイトペーパーで、Global Synchronizer稼働前10年間でCanton Coinのミント総量は1,000億枚、10年後は年間25億枚に減少するとしています。

しかし同時に、CantonはトークンのFDVを現在の時価総額と同等とみなすべきだとも述べています。なぜなら将来の供給量はバーンvsミントの動的均衡によって決まり、固定上限ではないからです。また、2026年1月1日からはブロック報酬が50%減少し、スーパー検証者のシェアも48%から20%に減少、インフレ率もさらに低下します。

現在の供給量330.6億枚、および0.137 USDTのプレマーケット価格で計算すると、Cantonトークンの現在の時価総額は約45億ドルとなります。もちろん、これを単独で見るべきではなく、コアは「バーン-ミント均衡」モデルの実際の運用効率にかかっています。

まとめ

Canton Networkは、パブリックチェーンに対する機関のプライバシー、コンプライアンス、相互運用性への懸念を打ち破り、三者の同時実現が可能であることを証明しました。プライバシーに配慮したL1アーキテクチャ、CIP-56資産標準、ユーティリティドリブンな経済モデルを通じて、機関レベルのRWAと暗号流動性の融合の中核プラットフォームとなっています。今後、クロスチェーン能力のアップグレードや高価値資産の継続的なオンチェーン化が進む中で、Cantonがグローバル資本市場のデジタル化プロセスで重要なハブとなるかどうか、引き続き注目していきます。