イーサリアムの将来を理解するには、まずその創設者であるヴィタリック・ブテリン氏に注目するのがよいだろう。2015年にイーサリアムを立ち上げる以前、ブテリン氏はブロックチェーンを単なるデジタルマネーの基盤ではなく、アイデンティティ、協調、公共的な信頼などを支えるツールとして捉えていた。
2021年に出演した 「ティム・フェリス・ショー」 で、ブテリン氏はイーサリアムを「ダイナミクスがあり、成長する、進化し続ける生き物」と表現した。その適応性は、今もなおネットワークの本質を形作っている。
誕生から10年を迎える2025年、コミュニティの有識者たちに「次の10年はどうなるのか」を尋ねた。
イーサリアムは「信頼のソフトウェア」
イーサリアム共同創設者のジョセフ・ルービン氏が設立したコンセンシスは、ネットワークのインフラ整備において重要な役割を果たしてきた。 最新レポート では、イーサリアムの未来に向けた意欲的なロードマップが示されている。
同レポートの共著者であり、コンセンシスのチーフエコノミストを務めるマレッシュ・パイ氏はこう述べる。
「今後5〜10年で、イーサリアムは世界をリードするスマートコントラクト・プラットフォームから、将来のグローバル経済の基盤的レイヤーへと進化するだろう。成長の原動力は資産のデジタル化であり、まずステーブルコインを皮切りに、そこからリスク階層を上がっていく形になる」
資産がオンチェーン化されれば、商取引もそれに追随するとパイ氏は語る。ただし、その優位性は既存の貢献者と、新たな世代の機関投資家および商業ビルダーの双方に依存すると強調する。
イーサリアムに賭ける企業の自信
ビットコイン（BTC）が上場企業の財務資産として保有されるケースが一般的だが、イーサリアムのネイティブトークンであるイーサ（ETH）を採用する企業も増えている。デジタルメディア・テクノロジー企業ゲームスクエアもその1つで、イーサリアムの長期的な可能性に大きく賭けている。
ゲームスクエアのジャスティン・ケナCEOはコインテレグラフに対し、「ETHは、インターネットの未来と整合性のある、最も信頼性の高い長期的なデジタル資産と考えて投資した」と語る。他チェーンが低手数料や高速処理を提供しているにもかかわらず、イーサリアムが優位である理由については「コミュニティとコンポーザビリティ（組み合わせの柔軟性）」を挙げる。
ケナ氏によれば、イーサリアムは「インターネットの金融および文化的な中核基盤」へと進化しつつある。グローバルな決済や資産管理から、エンタメIP、ゲームエコノミー、デジタルIDに至るまで、あらゆる領域でイーサリアムがインフラ層として機能する未来を描いている。
現実世界のデータとDeFiの未来
モジュラー型ブロックチェーンオラクルネットワークのレッドストーンは、スマートコントラクトに現実世界のデータを提供している。同社の共同創業者であるマルチン・カジミエルチャク氏は、次の10年でイーサリアムがDeFi（分散型金融）の枠を超えて発展すると見ている。
「イーサリアムは、金融や現実世界資産のトークン化における基盤的レイヤーへと進化していくだろう」とカジミエルチャク氏は語る。
スケーラビリティにおいても、レイヤー2（L2）の継続的な開発や、L1（メインチェーン）の拡張、さらには新たな仮想マシンの導入などにより、大きな進展が見込まれているという。
カジミエルチャク氏はまた、AIと同じように、ユーザーがイーサリアムを意識せずに使うような「シームレスな統合」が進むと予測している。「成功の指標はTVL（預け入れ資産額）やガス代ではない。どれほど“見えないが不可欠な存在”になれるかだ」と述べた。
企業時代に向けたイーサリアム
イーサリアム上に構築されたレイヤー2のオプティミズムは、次の10年を「企業のオンチェーン移行の時代」と見ている。
OPラボのプロダクト責任者であるサム・マッギングヴェイル氏はコインテレグラフに対し、「今後10年で、すべての大企業がオンチェーン化し、その多くがイーサリアム上に独自のインフラを統合するようになる」と語る。
規制の明確化が進む中で、金融機関、決済企業、フィンテック企業が次々と構築を開始しているという。「企業には、安全かつ柔軟で、強力なインフラが必要だ」とマッギングヴェイル氏は述べている。
未来を創るのは開発者たち
コインベースで開発者向けプラットフォームを統括するネミル・ダラル氏は、イーサリアムの未来は「使いやすさ」と「開発者コミュニティ」にかかっていると強調する。
「10年後を見据えると、AIエージェントが代わりに取引したり、より豊かなオンチェーン型のソーシャルコミュニティが生まれたり、ゲーム体験が進化したりする可能性がある」と語る。
彼に最も自信を与える要素は「開発者たちの存在」だという。「イーサリアムのコミュニティは、常に実験し、構築し、成果を出してきた。それが未来を切り開いていく力になる」と締めくくった。
実験からインフラへ
今後のイーサリアムに対するビジョンは多様だが、共通して語られるのはスマートコントラクトのプラットフォームから、現実世界資産や企業システム、日常のデジタル体験を支える基盤的レイヤーへの進化である。
ブロックチェーンの可能性を模索した最初の10年が終わり、次の10年は、イーサリアムが世界の仕組みの一部として、静かに、しかし確実に定着していく時代となるかもしれない。
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