サークル社、IPO成功後に米国信託銀行免許を申請

サークルによる上場企業としての次の一手、銀行業参入を本格化

米ドル建てステーブルコイン「 USDC 」の発行元である サークル （Circle）社は、IPO（新規株式公開）からわずか1カ月で、米国の信託銀行免許を 申請 した。

同社は連邦規制の枠組みに準拠し、自社の信頼性と透明性を一段と高める姿勢を示している。

サークルは OCC （米国通貨監督庁）に対し、全国信託銀行免許の申請を提出。承認されれば、連邦レベルの規制下でトークン化資産の発行やUSDCの準備金管理、機関投資家向けのカストディ業務など、より幅広い金融サービスを手がける体制が整う。

新たに設立が予定されている「First National Digital Currency Bank（ファースト・ナショナル・デジタル・カレンシー・バンク）（NA）」では、USDC準備金の直接保管に加え、トークン化された株式や債券といったデジタル資産の保管業務も行う方針。現金預金や融資といった従来型の銀行業務は扱わないとしている。

同社の準備金は現在、ブラックロックやBNYメロンが管理しているが、今後は信託銀行としての独自管理体制へと移行。一部は引き続き大手金融機関に委託する計画も示されている。ジェレミー・アレール（Jeremy Allaire）CEO（最高経営責任者）は「上場企業となることは当社のガバナンス強化の一環であり、国家信託銀行として承認を得ることは、その延長線上にある」と述べた。また「世界中の一流機関が安心して構築できる金融基盤を提供する」と語り、機関投資家の信頼確保を重要視している。

ステーブルコイン規制強化の中で高まる存在感

サークルの今回の動きは、米国でステーブルコインの包括的な規制法案が進む中で行われ、現在上院では、GENIUS法案が承認されており、流動性のある資産での裏付けや月次報告義務などが盛り込まれている。

法案は下院に提出されており、今後はCLARITY法案との統合も議論されている。こうした法整備を見据え、サークルは先回りして規制対応を進めており、今後の業界標準をリードする存在となる可能性が高い。すでに Shopify （ショッピファイ）によるステーブルコイン導入や、Worldcoin（ワールドコイン）関連のWorld ChainにおけるUSDC採用など、実用面でも拡大が進んでいる。

今後、OCCからの承認が得られれば、サークルは Anchorage Digital に次いで国家信託銀行としての認可を受けることになり、仮想通貨関連企業としては極めて稀な存在となる。

2025年6月5日の上場時点で同社の時価総額は約60億ドル（約8,615.8億円）だったが、現在の株価は1株181ドル（約26,000円）に達しており、時価総額は約440億ドル（約6.3兆円）まで拡大している。Barclays（バークレイズ）やBernstein（バーンスタイン）、Canaccord（カナコード）など複数の証券会社が200ドル（約28,700円）超の目標株価を提示するなど強気な評価が相次ぐ一方、JPMorgan（JPモルガン）やGoldman Sachs（ゴールドマン・サックス）は急騰後の過熱感に対して慎重な見方を示している。

信託銀行免許の取得には時間を要する可能性があるが、サークルのこれまでの実績や法令順守の姿勢をかんがみると、業界内では高い確率での承認が見込まれている。